2015年04月09日

“ない”から学ぶ

先日、久しぶりに20年来の友人に会った。気が置けない数少ない友人で、今では会う機会が少なくなってしまったが、会うたびに新鮮であり、刺激的である。

その友人は長い間、酷い乾燥肌に悩んでいた。洗顔の後にクリームやら液体をグイグイと塗り込んで肌の潤い状態を保っていた。ところが今はクリームやら液体やら、要するに外からの人工物を一切使用していないと言う。しかも乾燥しているようには見えない。「今まではお化粧をして、それを落とすためにゴシゴシ洗うことで肌を痛めて、そこにクリームやら液体を押し込んできた。それによって人間自身が持つ再生力や治癒力を失っていくことがわかった」と友人は言う。

私は激しい耳鳴りに悩んでいるのだが、前に整体師さんに「耳が探してしまうんだよ」と言われた。なるほど。某健康促進テレビ番組でも耳鳴りの原因のひとつには脳過敏症があると言っていた。どうやら脳が聞こえないはずの音を探してしまい、聞こえないから脳自身がその音を作り出すらしい。良かれ悪しかれ、人のカラダは本当によくできている。

私たちのカラダは、“ない”ことにきちんと反応し、きちんと作り出す。しかし即効性や簡易性を求め、外から異物を取り入れることで、人間固有の治癒力が減衰してしまうという友人談は理に適っている。

さて、友人と会った後、春休みを迎えた娘と愛知の実家に戻った。実家には、たいしたおもちゃやゲーム機はない。小学生にとっての娯楽はほとんど皆無である実家滞在中、娘は、じいちゃんと将棋三昧、ばあちゃんには裁縫を教えてもらい、私にエプロンを作ってくれた。もしゲーム機があったら、じいちゃんやばあちゃんとも、こんなにコミュニケーションをとっていなかっただろう。

“ない”ならば、楽しいことを創りだす。そもそも子どもは、その天才である。子どもの頃の私たちもそうであった様に。なぜ今は外的要因や物質に頼ってしまうのだろう。

“ない”ならば、あるものを工夫して使う。今の私にはその力が足りない事が、この数日間でわかった。ないなら買う。欲しいなら買う。今や世界中のおいしいものが手に入る。白髪だって茶色や金色になる。まつ毛だって長くできる。乾燥肌を潤すことができる。若さや健康だって買える。お金があれば何でも手に入る。そんな時代なのだと思っていた。

それで良しとする傍ら、自分の中にある再生力、治癒力、思考力、もっと言えば生きる力を脆弱にしているのかもしれない。

そう言えば、娘はクラスでも大人気のDSを持っていない。以前は欲しがったが、今は言わなくなった。それには理由があった。

学校ではDSソフトに出てくるキャラクターの話題で盛り上がるらしい。そのキャラクターを知らない娘は「それ、なーに?」と聞くと「え〜!?知らないのぉ〜?」と言われると言う。所詮子ども同士の会話、悪意はない。しかし、その一言が娘を哀しい気分にさせたそうだ。「だから、あたしは、あたしが知っていることで、友達が知らないことがあっても『え〜!?知らないのぉ〜!?』って絶対に言わない!! ちゃんと説明してあげるもん!!!」DSを持っていないことで気が付いた心の痛み。それも彼女なりに“ない”から学んだことである。

ひょっとしたら“ない”は、私たちを成長させてくれる素晴らしい要因なのかもしれない。

ふと隊長のこんな話を思い出した。
1995年エコチャレンジ・オーストラリア大会でのこと。レース中、女性メンバーが足首を炎症で歩けなくなった。リタイヤをするかどうかの決断を迫られた時、山岳経験の豊富なメンバーが、ザックの上下をひっくり返すと、それが背負子(しょいこ)のようになることを思い出した。「この方法で彼女を担ぎ、行けるところまで行きます」イーストウインドはレース継続を決めた。

男性メンバーが交代で女性メンバーを担ぎ、標高1000メートルも上った。藪の中もひたすら進んだ。このレース展開は主催者やメディア班を驚かせた。「信じられない!! 彼らは行くぞ!! どんなことがあってもやり遂げるぞっ!!!」イーストウインドの姿を捉えた空撮カメラマンが、思わず声に出したその言葉が映像に残っている。残念ながら完走はできなかったものの、その行動により、それまでになかった「Special Sprits Award(特別賞)」が生まれ、イーストウインドはその初回に輝いた。それは入賞とはまた違ったイーストウインドの誇りとなった。

“ない”は人間力を育む外的要因なのかもしれない。

1995年エコチャレンジ・オーストラリア大会


Team EAST WIND 場面
1) 15:21〜16:50(継続を決断する場面)
2) 20:03〜22:39(標高1000m登った場面)
3) 27:45〜29:51(継続中の場面)
4) 39:00〜42:10(ゴールを目の前にして無念のリタイヤの場面)
『Special Sprits Award』を、苦難と喜びを共にしたメンバーの倉田和輝選手に捧ぐ

posted by Sue at 10:22| Comment(0) | 悪妻のボヤキ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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