私は共同駐車場を利用するため、そこには何台もの車が停車している。大雪の日、車はすっぽりと雪に埋もれてしまった。まだまだ降り続く天候。放っておくと車が雪の重みで潰れてしまうため、車を掘り出すことに。
掘り出すのはいいが、そもそも車まで行くのが厄介。腰のあたりまで来る雪。ずんずんと踏み入るだけでも体力を使う。車へのアプローチ用に道を作る。そして掻いた雪の捨て場を選ぶ。そこからは無心に雪を掻く。
近くで同作業をしている人と互いに声を掛ける。
「大丈夫ですかー?」
「こっちに雪持ってきていいですよー」
互いに手伝いながら駐車スペースを作る。
雪壁で狭くなった道路を譲り合いながらすれ違う。
「止まってくれてありがとう」
「いえいえ、大丈夫ですよ」
それぞれの車内から合図であいさつを交わす。
普段はあいさつ程度の間柄でも、この時ばかりは団結して雪掻きをする。
除雪車も24時間出動し続け、ライフラインを守る。
雪の大変さは住民みんなが知っているのだ。
みなかみ町は自然が豊かである。谷川岳、利根川源流域、18湯の温泉地などがあり、私たちは観光資源でもあるこの自然の恩恵を受けて暮らしている。
雪も然り。雪が溶けて水になる。農業用水として用いるのはもちろん、雪によって農産物は甘味を増やす。ラフティングやカヌーができるのも雪溶け水のお陰である。うまい日本酒も雪溶け水からできる地下水で作られる。雪は大変な面がある一方、とても大切な資源でもある。
「雪は温かい」というのを聞いたことがあるだろうか?
雪の日は分厚い雲が空を覆っているので、地表の熱が逃げにくいらしい。また、雨から雪になる間は熱が発生するらしい。
しかし温かいのは気象学的理由だけではなさそうだ。こうした地域の人たちの互いを思いやる温かい気持ちをも雪は運んでくれるのかもしれない。被害が大きければ大きいほど、互いを思いやる気持ちは温かさを増すように思う。こうして雪人は互いに感謝し、厳しい冬を乗り切る。
さて、今や地球規模の災害とも言える新型コロナウイルス。この瞬間もこのウイルスに苦しむ人が多くいる。医療現場は休むことなく、この見えない敵と戦っている。もう戦争や経済制裁などやっている場合ではない。保身に躍起になっている場合でもない。
一人一人が互いを思いやれば、いつかこの厳しい冬を乗り切ると信じる。
戦争も保身も一時休戦。今は、今だけは敵も味方もご破算にして団結して、新型コロナウイルスの終息を目指してみたらどうだろう。
頑張ろう、地球。