2016年02月17日

家族の応援

Patagonian Expedition Race (PER) がスタートした。

このレースでは、優勝に手が届きそうで届かない。地球の裏側で行われるこの大会に、どうしてそこまで執着するのだろう。

渡航費は莫大にかかる(特に荷物超過料金)。装備がやたらと多い。配布される地図はいい加減。天候もコロコロ変わる。あるべき道もなければ、あり得ない道もある。時に主催者は押しの強いチームの意見に惑わされる。幾分かマシになってきてはいるけど。

「こんなクレージーなレースによく出るね」シリーズ戦常連チームですら呆れる。それでもこのレースに帰ってくる選手は多い。パタゴニアという手付かずの自然と、チリ人の人懐っこさも魅力のひとつなのかもしれない。

しかし、やはりそれ以上に、PERには『自然に対し、畏怖の念を抱き、それをあるがままに受け入れ、己の力だけで進む』というアドベンチャーレースの真意が凝縮されているのだと思う。だから隊長は挑み続けているような気がする。

近年、アドベンチャーレースはスピード重視となってきた。レースだからスピードが重視されるのは言う間でもないが、付加要素が多いアドベンチャーレースは、スピード以外にも重視されるべく事が多い。男女混成(チーム内ですら体力的に差が出る)、多種目(得手・不得手が生じる)、ナビゲーション(地図読み)が代表的な付加要素だが、何よりナビゲーション力が問われるのが、このPERである。ナビ力がなければ、このレースは勝てない。

しかし、今回は一本道のマウンテンバイクコースが長く取られている。PERもいよいよスピード重視になってきたかと思うと少し淋しくもなるが、どうやら、「確かに存在する道なのに、地図に明記されていない」という事があるらしい。そんなトリック的とも言える地図は「PERにしてやられた!」という感じが否めなくもない。一筋縄ではいかないのがPERだ。

そんな、とてつもなく壮大でエンターテイメントなレースだもの、隊長がこだわる気持ちがわからないでもない。ならば、アドベンチャーレースの真意を追及するために、とことんやったらいい。その生涯を掛けてまで見つけたいものなら、きっと意味がある。家族ができることはフォローする。

・・・なんて見得を切ったことが、娘にしわ寄せが行ってしまった。
隊長がチリ出発間際のある夜、娘が腹痛を起こし、粘血便が出た。翌日はかなり治まり、大事には至らなかったが、ネットなどで調べてみると、ストレスが原因でなることもあるらしい。

装備品で埋め尽くされた狭い我が家。揃って食事を取る時間も少なく、親が深夜過ぎてもゴソゴソ動いているため、寝る時間も短くなった娘。慣れているとはいえ、まだ7歳の子どもにとっては、こんなカオスはかなりの一大事で、大きなストレスになったのかもしれない。

思えば、出発間際は「忙しいから」というバリアを張って、娘の話を充分に聞いてあげてないような気がする。話をしようとしても「後でね」なんてバッサリ切られてしまったら、子どもだってストレスが溜まるのも無理はない。

それを粘血便が出てから気が付くとは・・・。「忙しいから」は大人にとって便利な言葉に想えるが、子どもにとっては一刀両断に邪魔者扱いされたと感じてしまうのかもしれない。

それでも彼女なりにフォローし続けた。空ボトルに柿ピーを詰め、行動食を作った。そして一個一個の蓋にメッセージを書き入れていた。隊長が現地に到着した後も、レーススタート前まで毎日「がんばってね」というメールを送っていた。

しかし、昨日、学校に提出する作文ノートに、こんな事を書いていた。
「お父さんはレースのため、チリにいます。お母さんは、それを中継するために、一日中パソコンに向かっています。ちょっとさみしいです」

そっか。勘違いしてたよ、お母さん。

いつも楽しそうにお父さんとメールのやり取りしてたし、ダブダブの応援Tシャツ着て嬉しそうに応援してるし、私がいつも家にいるんだし、それでいいんだと思ってた。それが二人で隊長をフォローしている事と思っていた。

でも違った。本当はさみしかったんだね。ごめんね。隊長が留守の間、私が本当にすべき事は『あなたを守る』ことだったんだね。

レース中、日本でチームをバックアップすることで、隊長も安心してレースができると思っていた。でも本当は、私が娘を守っていると思うからこそ、安心してレースができているのかもしれない。だとしたら、ごめん。お母さん、勘違いしてた。

今日、学校から帰ってきたら、一緒におやつを食べながら話を聞こう。苦手な跳び箱、飛べた?休憩時間は何して遊んだ?大好きな音楽の時間は何をやった?
お父さん、今頃どうしてるかな?ヨーキとケンカしてないかな?マチマチ、大丈夫かな?ヤマキー、食糧足りてるかな?なんて裏話もしよう。

それがきっと、今まさに日本の裏側で必死で戦っているお父さんが、もっと安心して前に進めるエールになるだろうから。


アキラ作:行動食
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posted by Sue at 11:35| Comment(0) | 愚母の苦悩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年02月09日

オーケストラ

先日、群馬交響楽団のコンサートを娘と観に行った。仕事とは裏腹にインドア派の私は、クラッシックやジャズを聴くのが好きなのだが、結婚後は足が遠のいていた。今回は、とても久しぶりのコンサートだった。

2曲目からソロのバイオリンが始まった。26分間にも及ぶ曲の途中、ふと、あることに気が付いた。

ソロの素晴らしさは言う間でもないのだが、ソロ以外の多くの楽器が、そのバイオリンの音を引き立てるために、絶妙な音を奏でていることの奥深さ。

ソロは、多くの楽器の伴奏なくては生きてこない。そして、その伴奏は多くの管楽器、弦楽器が幾重にも重なる。一人として間違えず、間を乱さず、指揮者に従う。音量も大きすぎず、小さすぎず。曲を引き締めるシンバルも出過ぎず、引き過ぎず。それがとても良い塩梅で視聴者に響いてくる。

気が付いたのは、それが今回のチームイーストウインドの姿と重なることである。

イーストウインドの4人がソロだとしたら、その後ろにはたくさんの奏者がいる。レースをうまく運ぶために協力してくれるギア担当者、サプリ担当者、メンテナンス担当者、日常のトレーニングを支えてくれる仲間たち、レースを盛り上げてくれる応援団、そして決して目立ちはしなくとも、その根をしっかり支えてくれる支援者。ひとりとして欠けていたら、イーストウインドは今日のこの舞台には立てなかった。

演奏中、私はソロ(イーストウインド)にとってどんな楽器かな?と考えてしまった。そう思う中、一際目を惹くのがコントラバスだった。奏者は数名で、もちろん旋律担当ではない。しかし、それが一体となって奏でる音とリズムは、オーケストラ全体をきちんと支えている。

とは言え、やはり私自身がどんな楽器なのかは分からないし、あそこまでうまく奏でているとは到底思えないけれど、イーストウインドのコントラバス的存在でいたいと願っている。

同時に、宮澤賢治の「セロ弾きのゴーシュ」を思い出した。思うようにいかない日、心がくじけた日、孤独を感じた日、スランプに苛まれた日・・・。辛いことがたくさん事があったけど、そこから生まれたものは、他には変えられない価値がある。

だから自信を持て。

イーストウインドは、そろそろチリ最南端のプンタアレナスに到着するころ。忘れるなかれ、君らはたった4人じゃない。地球の裏側には、たくさんの伴奏者がいることを。見守ってくれる、あったかい伴奏者であることを。


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posted by Sue at 14:07| Comment(0) | 干物女の行水 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年01月25日

娘からの質問

「ねえ、お母さん。なんでテロとかってするの?人をたくさん殺してまで、何が欲しいの?」娘に聞かれた。時々、子どもは大人が答えに窮する質問をさらっとしてくる。

そうだね、何が欲しいんだろうね。自由、平和、しあわせ、満足感、名声、富、権力・・・。テロに大義名分はあるだろうけど、その行為によって彼らが本当に欲しかった物は得られているのかな。

私たち人間は、時折、もの凄く「欲」が強くなるね。恥ずかしながら、お母さん(私)なんかは、その最先端にいるのかもしれないよ。だって欲しい物、いっぱいあるもん。でもね、そんな「欲」が強すぎちゃって、時々目の前にある大切なものを見失う時もあるんだよ。

目に見えるもので、持ってない物が欲しくなっちゃって、目に見えない大切なものが見えなくなっちゃうんだよ。

たとえば、たくさんの富と引き換えに、あなたの笑顔を見られないという取引があったとしたら、お母さんは迷わずにあなたの笑顔を選ぶ。でも世の中には、大切な人の笑顔より富の方を選ぶ大人がたくさんいるんだよ。

「お腹が空いたから、ご飯を食べる」「学校に行って、みんなと勉強や運動や時々ケンカする」「温かいお布団で眠る」「大好きな人といっしょにいる」「ただいま/おかえりって言える場所がある」そんな小さな願いも、国益とやらのために、簡単に潰されちゃう。今、目の前にある人を笑顔にさせられず、誰を笑顔にさせられるって言うんだろうね。

私たちって悲しみや苦しみと常に一緒いると思わない?
この間、お母さんが大好きだった叔母ちゃんが亡くなったでしょ。あの時、お母さんは周りの人が驚くくらい、わんわん声をあげて泣いたよね。

通夜のあと、従弟(叔母ちゃんの息子)が来て、私の肩に手を当てて「ありがとう。母さん、喜んでるよ」と言ってくれてね。その時、大切な人を送り出すことも幸せなことなんだと思ったよ。傍にいなくなってしまう事は悲しいけれど、愛情いっぱいに送り出せるのも、送り出される側にとっても、この上なくしあわせなことだと思ったよ。別れが淋しくて涙をしてくれる人がいる事は、とてもしあわせなことなんだって従弟の言葉でわかったよ。

でもね、戦地では、それができない人もたくさんいる。どこに行き、どこでその大切な命を閉じているのかもわからない。人は必ず天国に行く。でも、その時に「ありがとう」って送り出せない事ほど、残った人間にとって辛いことはないかな。

あなたは「〇〇ちゃんとケンカした」って学校の話をしてくれるけど、そんな話を聞いていて思うんだよ。「ケンカして、仲直りして、また遊べる。そんな事を繰り返せる日々が、そんなお友達がいるってことが、しあわせなんだなぁ」って。だから、そんなケンカ友達も大切にしようね。今は解らないかもしれないけど。

これからのあなたが大人になる過程で、いろんな人たちに出会うだろう。

とても嫌だなって思う人に出会うこともある。でもね、それは自分を成長させてくれる糧になるかもしれない。反面教師として「こうされたら、どう思う?」「こういう言い方をされたら、気分良くないでしょ」と言うのを、身を持って教えてくれる奇特な人。そんな嫌われ役を買って出てくれる有難い人だと思わない?だから怒らない、怒らない。

また、あなたをとても好きになってくれる人にも出会う。あなたのために泣いてくれたり、笑ってくれたり、励ましてくれたり。そして、あなたもその人のために涙を流したり、話を聞いたり、一緒に大笑いする。やがて「ただいま/おかえり」って言える人に出会う。

あなたが出会うすべての人が、あなたにとって意味があり、大切な人になる。

今、私たちがこうしている時間にも世界のどこかで大量の血と涙が流れている。そして哀しみが怒りに変わる。それがテロとなり、また新たな血が流れる。この連鎖は、どこで止まるのか。悲しみを生み出す「欲しい、欲しい」は、どこかでやめられないのか。

ねぇ、あなたには、人を殺してまで欲しいもの、ある?
ないから、欲しくなるのかな?だったら自分が持ってないものを数えるより、持っているものを数えてみようか。結構あるね。しあわせになるのに大義名分なんて要らないね。今ここにある瞬間を想えば、大切な人を想えば、「充分なしあわせ」が見えてくるのにね。


posted by Sue at 09:59| Comment(0) | 愚母の苦悩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年01月11日

ダメだし

先日、ある仕事がうまくいかず落ち込んでいた。隊長と議論するも、「そこが良くない」「もうちょっと上手くやらないと」。出てくるのは落ち込んでいる原因をグリグリと抉るばかりで、気持ちが更に深く落ちていく。哀しい事に、改善するようなアイデアは出てこなかった。

隊長になら落ち込んだ気持ちを言える。しかし、他者には仕事の失敗で落ち込んでいるなどと言えない。いわゆる「ダメだし」を受け続けなくてはならないのだ。

もういいよ。もうその話は止めようよ。心がチクチクするよ。黒くてドロドロした波に呑まれるような気分だった。

そんな中での一本の電話。主は昔から馴染のあるYさんで、私たちのことをよく知っている人物。今回の私の失敗を受け、電話をくれたのだ。

「あれは失敗だね」そんな分かり切ったことをまた言われるのかと構えたのだが、彼はひとつも責めることはなかった。むしろ改善を一緒に考えてくれる励ましに聞こえた。「次はこうしない?」「あ、いいこと思いついた!これってどう?」「僕がこれやるから、すーさんはこれやってよ。大丈夫、うまくいくよ」深く凹んでいた心が、徐々に盛り上がっていくのが分かった。

落ち込む原因であるはずの内容が、彼と話をすると、ともかく楽しい。なんだろう、この前向きな感覚。声のトーン?電話越しの笑い声?

じわじわと救われていく心。「次は巻き返すぞ!」という意欲。失敗のはずが、なぜだかワクワクしてくる感覚。「失敗しても落ち込まなくてもいいんだ。ワクワクしてもいいんだ」なんだかそんな気分になっていった。

「人間はダメだしの天才」と心理学者アドラーは言う。「あれじゃダメだ」は誰でも言える。テレビに出てくるタレントやアスリートはもちろん、会社内や家庭内でも、人は他者の言動に対して簡単にダメだしする。その人がどんな気持ちでそうしたか、どんな理由があるのか、陰でどんな努力があったのかなど、何も知らないのに。

思えば、私も簡単にダメだししている。特に娘に対しては「これじゃダメ」「もっとちゃんとしなさい」など、漠然とした注意ばかりで、改善方法を一緒に探すことはしていない。これじゃ活を入れるどころか、凹ませるばかりだ。

失敗は誰にでもあるし、成功するためにはついて回る。失敗をして一番反省し、凹んでいるのが当人であれば、それ以上責める必要はない。当人が事の事態をしっかり受け止めて、落ち込むだけ落ち込んだら、同じ失敗をしないように気を付けるだろう。ならば、これ以上は責め立てず、娘が顔をあげて、背筋を伸ばして、再び一歩踏み出すよう背中を押すことが、親の役目かもしれない。

今年でアドベンチャーレース歴22年となる隊長。今までに幾度も幾度も失敗を重ねてきた。その度に、多方面からダメだしを食らう。親身になっての温かいダメだしもあるが、中には心無いダメだし、意味不明のダメだし、単に他人事のダメだしもある。そして、これからも新たな失敗と、そのダメだしに苛まれるだろう。しかし、温かいダメだしには愛情と優しさがあり、出された方は、それをきちんと感じるものだ。

隊長が22年間もダメだしをされながらもアドベンチャーレースを止めないのは、温かいダメだし(励まし)をしてくれる人たちによって、常にアドベンチャーレースに対しするワクワク感があるからなのかもしれない。私が感じたYさんからの励ましと同じく、次につなぐ意欲になるのだろう。

さて、2月はPatagonian Expedition Race。これまでの失敗と、親身になった温かいダメだしと、そしてワクワクする意欲と、新たな決意を抱え、これまでの集大成とされるこの大会に隊長は出場する。田中正人48歳、現役アドベンチャーレーサー、まだまだ日々精進。




posted by Sue at 09:28| Comment(0) | 悪妻のボヤキ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年12月27日

ブラジルレースを終えて

今回のブラジルレースは、前代未聞のオンパレードであった。

まずは参加費の国際送金。国際レースにしては今どき珍しい地銀指定。時間はかかるわ、手数料はかかるわ。挙句の果てにブラジル全体の銀行がストライキに入り、入金できずにこちらに戻るわ。すったもんだあって、最終的には、日本出発ギリギリになんとか入金完了。

次にスタート地点までの移動。なんたって遠い!!地球の裏側だもの、フライトに時間がかかるのは致し方ないけれど、現地では最寄の空港から車で6時間のところが集合地。スタートラインはここから軍の船で12時間遡上した場所。

そしてコース。隊長は「アドベンチャーレースを20年以上もやっているけど、ここまでワイルドな地域は初めて。人間が入ってはいけない場所、本物のマザーネイチャーに入ってきてしまったという感覚」と言う。案の定、コースディレクターも調査に入っていない場所がコースになっていた(通常のレースは、コースディレクターが全コースの調査に入り、安全性を確認し、所要時間の見積もりを出す)。

コース調査に入っていないせいか、所要時間の見積もりもかなりいい加減。「早ければ、この日にはゴールする」という日ですら、トップチームで、まだ3割しか進んでいない。後続チームに至っては、時間もないからと、順にセスナで搬送。しかし急な悪天候によってセスナを飛ばせず、イーストウインドは22時間のセスナ待ち。

再スタートしたものの、途中で渡船場所があり、そこで大渋滞が起きた。24時間渡船可能と説明があったのだが、どうやら夜間渡船をしていない。これまたスタッフもいない。選手だけがどんどん集まり、立ち往生。最終的に主催者が下した判断は、ここの到着順でゴール順位が決まる、というものだった。なんともスッキリしないゴールである。

リザルトが出た。釈然としない。なぜ、このセクションの所要時間この時間なのか?11位〜19位の順位の出し方がめちゃくちゃだ。何度見てもよくわからない。どうしてこうなる?解せないことが多すぎる今回のレースだ。

「誰もクレームをつけなかったの?」隊長に聞いてみた。熱中症に倒れ、足のマメや痛みに耐え、噛みつき蟻や、蚊の大群にも耐えてのレース。こんなに必至に戦っているのに、腑に落ちないルール変更で、さぞやみんな怒り心頭かと思った。

しかし、隊長の返事は、拍子抜けするほどあっさり。「うん。誰も言わない。言って何か良い状況に変わるということはないし、それでどうこうなるもんでもない」

言うまでもなく、順位は大事だ。選手たちはそれを競う。しかし、彼らは、どうやらそれだけじゃないようだ。そこには、その場に立った人間のみが得られる計り知れない何かがあるようだ。「人間が入ってはいけない場所に入れたんだ。それだけでもすごいこと。レースの運営はともあれ、環境は大絶景だったよ。二度と行かれないだろうなぁ、あんなところ」と隊長。なんとも呑気な発言にも思える一方で、透き通るほどピュアな響きと、余分なものすべてが削ぎ落とされたような感覚。

私なら、きっと激怒していただろう。「コースに調査に入らないなんて、何かあったらどうするつもりなの!」「この時間設定はおかしすぎるでしょ!」「順位の出し方があやふやすぎる!」怒りの訳を挙げれば、きりがない。

そう。きりがないのだ。怒っても事態は変わらない。だから怒っても仕方ない。怒るだけ体力を使う。ならば、その事態を受け入れ、そこからどうするかを考える。さらには、そんな滅多に陥る事のない窮地を味わう。選手たちは想像以上に大人だった。

「アドベンチャーレースは大人の究極に贅沢な遊び」とは言うが、これは装備にお金がかかるという意味ではなく、このスポーツでしか味わえない醍醐味があり、辛さがあり、喜びがある。彼らはそれを子どものようにストレートに感じられるのである。

なるほど。それだけでも行った甲斐はあったようだ。危ない目には遭いたくないけど、でも、そんな話を聞くと選手がちょっと羨ましい。

私はどうだろう。子育ても、仕事も、人間関係も、家事も、思うようにならないと、イライラして怒り出す。だれかのせいにしたがる。怒ったって何ひとつ変わるわけでもないし、増してや、それが改善されることもない。

ならば、そこからどうするか。偶然起きた事は必然性でもある。悪いのは誰かを探すことより、なぜそうなったのか、そして、そこからどうするかを考えていくようにしたい。

頭では分かっていても、いざとなって実行に移せない。もう少し大人になりたいものだ。
悪妻愚母、来年も日々精進していきます。



posted by Sue at 09:21| Comment(0) | 悪妻のボヤキ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年11月28日

笑い飛ばす力

冷静になれば、原因はただのコミュニケーション不足だとわかるのだが、カッとなっている間は、原因追及はおろか、相手の揚げ足を取って、怒りが再燃。私はいつまで経っても子どもである。

先日、娘のわがままな言動に苛立ち、ついカッとなって怒ってしまった。叱ったのではない。怒ってしまったのだ。言葉が達者になってきた娘とは水掛け論が続く。いい大人が小学校2年生相手に恥ずかしいことではあるが、カッとなった頭は早々には冷めない。自分でも驚くほど、刺々しい言葉が口から出る。

「あの時もそうだった」などと、脳が既にクローズした案件までを引き出してくるから厄介だ。どうやら私の脳は、怒りを鎮めるのではなく、似たような出来事を引っ張り出す方が得意らしい。

しばらくすると空しさが一気に襲い来る。互いを責めつくしたって何も残らない。スッキリ感もない。ただ、後悔ばかりである。もう何度も経験しているのに、なぜ私の脳は学習しないのだろう。

私が子どもを育てることが間違っているのだろうか。この子は私の子に生まれて幸せなのだろうか。他のお母さんたちは、どうやって子どもと向き合っているのだろうか。他人の親子関係がとてもうまく行っているように映り、自分だけがうまくやれないという劣等感。

私は負のスパイラルにずっぽりと嵌ってしまった。

その時、突然「パンタナルのレースでさ」と、隊長が話を始めた。「ブラジル人がどんだけ陽気かってのがよくわかったよ」。え?今言うこと?

「あるCP付近で複数のブラジルチームと一緒になったんだよ。もう暑くて辛くて、疲労が蓄積していて、俺たちもブラジリアンも、みんなフラフラ状態なわけ。

でもさ、ブラジルの人たちって、ずっとゲラゲラ笑ってるんだよ。暑さにやられたかと思うくらい。ともかく陽気なんだよ。

彼らね、CPまで後数キロってところで道に迷ってさ。すぐそこにCPがあるなら、俺たちだったら焦りまくるけど、彼らは急に座りだして休憩してんの。ゲラゲラ笑ってんの。

他のチームも傍にいるし、一刻も速くCPに着きたい。こういう場合、メンバーがナビゲーターに『しっかりしろよ!』って叱責することが多いけど、彼らはチーム全体が平気な様子。『じゃ、北に行ってみよっか』って、ゲラゲラ笑いながら方向を決めて、ゲラゲラ笑いながら立ち上がって北に行っちゃった。ともかく明るいんだよ。それがず〜〜〜〜っと変わらない。最後までゲラゲラ笑ってんの。すごくメンタル、強いな〜って思った」

確かに今回のレースでは、ブラジルチームは強かった。地元だし、暑さに強いのかと思っていたが、どうやら鍵は、その明るさにあるようだ。

隊長は言う「あんなに辛いレースなのに、彼らは楽しそうなんだよ。辛さですら、楽しんでいるという余裕を感じた」と。

ナビゲーターが余裕もなくギスギスしたら、メンバーに不安を与えてしまう。もっと迷うかもしれない。そんな時は、メンバーの「気にすんな。次行こう!」という言葉は、どれほど励みになるだろう。責めずにゲラゲラ笑い飛ばす。そんなチームであれば、辛いはずのレースもなんだか楽しい。

子育ても、ある意味、アドベンチャーレースに似ているかもしれない。

娘につい求めすぎていた。娘がその要求を満たせないと、ついカッとなってしまっていた。責めたところで、いい結果は出るはずもない。ならば「これもこの子の個性」と捉え、少しの苛立ちも笑い飛ばすことができれば、どんなに気楽になるだろう。

笑い飛ばす力。これが私に欠けていることかもしれない。「ちいさなミスを積み重ねれば、重大な事故につながる」というのはよく解る。が、場合によっては「小さなミスは、ひとまず笑い飛ばしてみる」というのも、アリなのかと思う。

娘は元気に育っている。それだけで十分。多少のわがままは、彼女の個性。そもそも小学生の時にわがまま言わずして、いつ言うのだ。物事をもっと大きく捉えて笑い飛ばす。子どもが不安にならないように、「気にすんな。次行こう!」と励ます。そんな母でいたいと思う、ブラジルチームからの教えである。

お蔭で頭が冷めた。隊長の「今、それ言うこと?」って挿入話は、実にタイムリーだった。


posted by Sue at 08:31| Comment(0) | 愚母の苦悩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年11月17日

アドベンチャーレース世界選手権 in パンタナル(ブラジル)に想うこと

アドベンチャーレース世界選手権2015の火蓋が切られた。「やっとスタートした」という安堵感。今回はスタートラインに立つまでが、本当に大変だった。

そもそも最初にこのレースの話が来た時は、正直、反対だった。3ヶ月後の2月には本命のパタゴニアレースがある。それまでに身体的ダメージが回復するのか、資金はどうするのか、ヨーキがいなくてレースができるのか、何より女性メンバーはどうするのか。マチマチ(西井万智子)は、まだ国内のレース経験すら少ない。海外レースに出るだけの技術もない。考えれば考えるほど分が悪い。

反対だった私は、事務局としての役割を躊躇した。ヨーキの代わりになるメンバーなんて早々に見つかるものではないし、マチマチだって、ハイウォーター(増水期)のリバーガイドにだって(当時は)まだなっていない。そんな状況だもの、出場するだけ資金がもったいない。だったら、2月のパタゴニアレースに向けて意識を集中した方がよっぽどいい。そう思っていた。

「今回は無理だよ」気乗りしない私に対し、隊長は言った。「無理って壁は自分が作る。俺はやる。絶対にやる」。私は、その熱意に折れた。

私の意に反して、事は動いた。いや、隊長が動かし始めた。まずはメンバー探し。ヤマキー(山北道智)は、2月にパタゴニアレースを控えている。ヤマキーの愛妻は二人目の子がお腹の中にいる。しかも11月が出産予定。仕事もそんなに休めるはずもなく、お産を控えた家族も大変な真っ最中。しかし、ヤマキーからは「行きます」とふたつ返事が返ってきた。

そしてもう1名の男性メンバー。レースでは重要な鍵となる。国内のアドベンチャーレーサーの中でも最も顔が広いワッキー(和木香織利。元イーストウインドのトレーニング生でパタゴニアレースに出場)に相談したところ、ハニくん(高濱康弘)の名前があがった。ワッキーの話から、彼の性格がイーストウインドに合うと直感した。国内のレースもいくつか経験があるし、成績も良い。しかし、お固い企業のサラリーマンである。1カ月近くも休みが取れるかどうか。ハニくんにラブコールを送ったところ、「誰にでもあるチャンスじゃないから」と、彼は会社も家族も説得して出場を決めた。彼ならやってくれる。私たちは、ヨーキの代わりではなく、新メンバーとしてハニくんを迎えた。

残るは女性メンバー。マチマチは難しい。そう隊長は思っていた。経験も浅いし、技術も不足しているが、何より彼女のマイペースさが引っかかっていた。また思ったことを口に出さない事も悩みの種だった。

アドベンチャーレースは幾日間もメンバーと歩き続けなければならない。睡眠も食料も不十分。休む間もなく動けば、当然ストレスは溜まる。しかしそれを口に出すことができないため、やがて不満を抱え込み、それがチームへの不信感となり、チームを破滅へと追い込む。若い選手や経験の浅い選手にありがちな問題だ。

心当たりのある女性アスリートに声をかけた。しかし、返事が先送りとなる。早々にフライトチケットを購入しなくてはいけない。隊長が出した決断は「マチマチを連れて行く」であった。

こうしてチームメンバーが決まり、それぞれのトレーニングが始まった。

ヤマキーは、切迫早産のため入院した愛妻の分まで上の子の面倒を看ながら会社に行った。トレーニングは子どもが寝付いてから行うしかないのだが、ママがいない事に不安があるのか、夜中必ず目が覚めてしまうという。ヤマキーは深夜にランニングすることも。そんな環境である事を淡々と述べているが、実際には、とても大変だっただろうと思う。そんな大変さを顔に出さないのがヤマキーだ。みんなに心配かけないようにしたのかもしれない。出会った時は20歳だったのに、今では、すっかり一家の大黒柱の顔なっていた。

不安を引きずったのはマチマチだった。初めてのことばかりが一気にのしかかり、要領が呑み込めていないようだった。しかし、もうゆっくり教えている時間はない。一気に教えようとする隊長。それをなかなか得られないマチマチ。徐々に溝が深くなっていく。

「マチマチには無理なんじゃないか」そういう意見も出た。しかし隊長は「マチマチと決めたんだから、彼女でいく。ここで逃げていたら、マチマチのためにもならないし、自分たちの成長も止まってしまう。アドベンチャーレースは成長の場でもあるから」と言った。マチマチが隊長に出会ったのも、隊長がマチマチに出会ったのも、大きな意味がある。「合わないから」と組むのをやめるのは簡単だ。しかし、あえて一緒に戦う。自分たちの成長のために。互いの成長のために。

そんな時、私は、マチマチと二人でゆっくり話す機会があった。男性メンバーに責められているように感じてはいないか?負担に感じているのではないか?そんな懸念をしていた。メンバーに温度差があるのは、チーム競技によくあること。思い入れの強い人の熱意についていけない事もある。

それでも気持ちは必ず通じる。ちゃんと話せば解ってもらえる。私は、彼女を責めるのでもなく、彼らを弁解するのでもなく、ただ、見ていて思ったことを伝えた。マチマチが想っているよりずっとずっと、彼らはマチマチが好きであること。一緒に戦おうと決めたこと。私の拙い言葉を、どこまで解ってくれたかは定かではないけれど、それでも彼女は涙を流しながら頷いて聞いてくれた。

その日から、ちょっとずつチームの雰囲気が変わっていった。そしていい感じに仕上がって、ブラジルに向かった。現地にいるジャーナリストの久保田亜矢さんがフェイスブックにこう書いている。
「イーストウインドのチームの雰囲気はとても良く、(パタゴニアのレースはわかりませんが)今まで私がイーストウインドの海外レースを見てきた中で安心してみていられる感じがします」

言いたい事をうまく表現できないのも個性、思ったことをすぐに口に出すのも個性である。今頃は、その個性をぶつけ合い、引き出し合いながら、濃い藪の中を進んでいることだろう。

隊長は、よくこんなことを言う。
「アドベンチャーレースは、漫画のONE PIECEに似ている。其々が其々の目的を抱き、ひとつの船に乗る。目的は違っているのに、行き先は同じ。アドベンチャーレースも、夢や目標は其々異なるけど、チームという船に乗ってひとつの場所を目指す。個性が異なる仲間と乗船して、それぞれの目的に向かう。それが途轍もなく面白い旅になる。僕はそれでいいと思っている」

さて、レースも3日目を迎えた。これから疲労、睡魔、そして予期せぬストレスが迫り来る。どんな過酷な状況下にあっても、イーストウインドは仲間と共にグランドラインを越えて行くと信じている。



posted by Sue at 15:37| Comment(0) | 干物女の行水 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年10月14日

負けるもんか!

先日、娘の小学校でマラソン大会があった。3q弱の通学ランをしている娘にとって、パッとしない運動会(短距離)に比べたら、長距離走は、まだ発揮できる余地あり!?
昨年の順位より、少しは上に行きたいというのが胸の中にあったらしく、娘なりの目標順位を立てた。

練習会では、その順位に達したらしく、ゴールの感覚を掴んだ。しかし現実はそんなに甘くない。本番、力走したものの、周囲の速さには及ばず、結果、昨年と同位。娘は、悔しくてこっそり泣いていた。その想いを知っていたからこそ、言葉が出なかった。「がんばったじゃん」も「残念だったね」も「よくやったよ」も、すべて違う。でも、どんな取り繕った慰めの言葉より、その悔し涙がすべてを浄化しているように思えた。

ふと見渡すと、悔し泣きしている子が幾人かいた。そうかぁ。それぞれの子が、それぞれのおうちが目標に向けてがんばったんだね。大人になると我慢ということを覚えてしまうから、人前で負けた悔しさで涙を流す事はなくなってしまう。だから、今、きみたちが素直に感じたままに流す涙は、とても貴重なもの。恥やら外聞やらを身につけてしまった私たち大人にはできない、とても素直で純真な行動。

ふと「父親がアドベンチャーレーサーなんだから、足の速いのは当たり前。負けたのはトレーニング不足。これを反省して次につなげよう」なんて思ったりもした。でも、そんなカラカラに干からびた反省は、自分のお粗末なエゴであり、純粋な娘の悔し涙とはまったく異なる。外聞ばかりを気にしていた自分を恥ずかしく思う。

その日、学校から帰ってきた娘は、「ただいま〜!お腹空いた〜〜」と、ケロリとしていた。午前中に大粒の涙を流していたと思ったのに、もうすっかり忘れているようだ。それでもおやつを頬張りながら、ぼそっと「次は負けるもんか!がんばるね」と、微笑みながら宣言した。

時として必要な負けもある。今回は、娘だけではなく、エゴで固まった私自身にも必要な負けだったんだ。次は負けない、自分のエゴに。


さて、ブラジルで開催される世界選手権まで一ヶ月を切った。海外レース初挑戦となる西井マチマチと高濱ハニワくん。きっと計り知れない不安があるだろう。そんな不安を含めてのアドベンチャーレースは、一体どうなるだろうか。

長丁場のレースでは、もしかしたら、悔しくて仕方ないような出来事も起きるかもしれない。自分は完璧でも、チームメンバーの自己管理が不十分であったため、思うようにレースが運べないかもしれない。どうせ人など住みつかない大自然なのだ。そんな時は涙を流してもいいし、思い切り叫んでもいい。それでも、「負けるもんか」の強い想いがあれば、きっと状況を立て直すことができるだろう。

チームマネージメントの立場として、このような事を言うとお叱りを受けるかもしれないが、やるだけのことをしたなら、それでいい。結果は自然とついてくる。ハニワくんにもマチマチにも、私たちができないこと、味わえない感情、立つことのできない大自然、たくさんの事を感じ取って、強く羽ばたいてほしいと思うのだ。今までに流してきた涙と、レース中に流すかもしれない涙と、「負けるもんか」を胸に、ありったけの力で、思う存分にレースに立ち向かってほしい。

アドベンチャーレース世界選手権inブラジル



 


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2015年09月10日

Team EAST WINDの約束事

ブラジルで開催されるアドベンチャーレース世界選手権まで、約2カ月。

大会中はずっと重い荷物を背負って進むので、今から慣らしておくために、13sの荷物(砂)を背負って走ってランする隊長。10月からは20sにアップする計画。レース中にメンバーのペースが落ちたら、そのメンバーの荷物を背負わなくてはいけない。急に重いものを背負うと肩が痛くなるし、それが全身の痛みにつながるため、今から慣らしておく必要があるのだそうだ。

荷物を持ってもらう側にしてみれば、普通に歩くことができない事に申し訳なく思うものの、その負荷をメンバーが背負ってくれるのだから「痛いから止めたい」などと口にするわけにはいかない。結局、チームの負荷はメンバー全員で抱え、支え、前に進む。それが「アドベンチャーレース」なのだ。

隊長自身も語っているように、そもそも彼はチーム競技向きの性格を持ち合わせていなかった。完全なる自己主義。小学生の頃は、常に自分が正しいと思っていたという。意見の合わないクラスメイトとは徹底的に、しかも勝つまでケンカしたとか。まったく嫌なタイプだ。

私が隊長と出会った当初、その傾向を垣間見るようなレース展開がいくつもあった。所詮チームの和なんてきれいごと。実力がある奴が勝つ。だから、チーム競技は実力のある奴が集まったチームが勝つ。メンバーが固定しなかったのも、常に「勝つための強いメンバー」を探し求めていたからなのかもしれない。

ある年のレースで、イーストウインドには最強とも思われるメンバーが集まった。個々に能力が備わっているので、国内でチームトレーニングなどしなくとも、充分に世界と戦える。そう思えた。

しかし、結果は惨敗。「強いメンバーが集まれば勝てる」という考え方は見事に裏切られた。しかもチームは崩壊。そもそもこのチームには、日本人が強みとする「和」は存在しなかったのだから、崩壊するも何も、最初から何もなかった。しかし、もしそれがあったら、このレースはかなりの上位に食い込んでいただろうと思う。

あれから隊長は幾度も、幾度も、幾度もレースを経験した。その度に「チームワークとは何か」という課題を突きつけられた。

自問自答を何度も何度も繰り返すうちに、少しずつ、自分たちなりにその意味や大切さを感じ取っていった。机上で学ぶのではなく、実地から学ぶことの意味を知っていくことになるのだ。

やがて私たちの間に子どもが生まれた。2人が3人になり、ある種のチームができた。子どもができたことで学ぶことは多い。私たちは親として、子どものためにできることをする。それは決して、子どものわがままを聞く事ではなく、親の意見を押し付けることでもない。ただ純粋に「今、何をしたらこの子のためになるだろうか」という思考が物事を決める上でのベースになった。

実際のところ、家族が最も身近なチームである。子どもも、まずは家族間でチームワークを学ぶ。家族間におけるチームワークは、きっと社会においても、レースにおいても、他者との人間関係においても、通じるところがあろう。

家族やチームに関わらず、この世は人と関わって事は進む。当然、自分と意見の合わない人も出てこよう。互いの主張が噛み合わず、ケンカになり、終には相手の人間性までを否定し始める、なんて事もある。

意見を言い合うのならまだいい。相手に意思を示しているから。しかし最終的に人間関係を崩壊してしまうのが「無視」である。アドベンチャーレースでは、これが一番簡単にチームワークを乱す方法だ。アドベンチャーレースにおいて「無視」は、チームメンバーに負荷を掛けるよりも、甘えるよりも、言い争うよりも、感情的になるよりも、何よりも自己中心極まりない行動だ。

「人は人を想う時、いつも以上の力を出す」と隊長が言う。その極みが、戦争中の特攻隊なのかもしれない。本当は自爆攻撃などしたくない。怖くて怖くて仕方ない。しかし、家族や国家を想って奮い立つ。あまりにも極端ではあるが、それもひとつなのだろうと思う。

私たち人間は、時に意見をぶつかり合わせながらも、支え合って生きている。自分の考えや意見を相手にうまく伝えられずに、悔しい思いもすることもあるし、孤独に陥る時もある。「自分はこんなに頑張ってるのに、どうしてわかってもらえないの?」なんて落ち込むこともしょっちゅうだ。

そんな時、少しだけ中心を変えてみてはどうだろう。「私は辛いの!」という気持ちを枠外に持っていき、そこに「今、この場を良くするためにはどうしたらいいのか?」といった、大義を中心に持って行く。そうすると、今まで自分のことしか見えていなかったことに気が付き、大きな枠で課題と自分自身を捉えられるかもしれない。



さて、後にTeam EAST WINDの約束事を作った。
『レース中、壁にぶつか時、自分の感情を言うのではなく、今チームのためにできるベストな方法を言い合う』


さて、以下は、以前は完全なる自己主義だった隊長の談。

『初めてアドベンチャーレース(’94レイドゴロワーズ・マレーシア大会)に出場した時、思い切り叩きのめされたんです。個人競技は自分の実力次第ですが、チーム競技であるアドベンチャーレースでは、自分だけがいくら強くても勝てない。

しかもそれに自然条件が絡んできます。数時間前にそこを通ったチームは天候に恵まれていても、自分たちが通る時は土砂降りになっていたり、川の水量が増えてたり。すべてにおいてイーブンではない。

ストレスが溜まり、些細な事でメンバーとの諍いも起きる。益々、苛立ちが募る。どんどんと悪循環に陥るんです。そして何より自分自身のコントロールがもっとも難しいと教えられました。

だからこそ「これだ!」と思ったんです。「アドベンチャーレースこそ自分を成長させてくれる場だ」と。

協調性のなかった自分が、アドベンチャーレースによって多くのことを学び、欠けているものを教えてくれると思ったんです』



ブラジルの世界選手権までのこり約2か月。
さてさて、今回はどんな展開になるか、楽しみだ。
イーストウインドのホームページ







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2015年07月12日

アドベンチャーレース世界選手権inブラジル 出場にあたり

今年11月、ブラジルで開催されるアドベンチャーレース世界選手権に出場することにした。文字通り2015年の世界王者を決定するレースである。

結成して19年となるイーストウインド。今では世界でも老舗チームとなり、大会会場に行けば、外国人スタッフから「自国のチームより、イーストウインドを応援してるよ」とこっそりと声を掛けられる。

イーストウインドは、老舗チームではあるがメンバーが固定しない。隊長以外は、なかなか継続しなかった。そんな中、大学院を卒業したばかりの陽希が現れた。社会科教師の資格を擲ってまでトレーニング生に応募してきたのだが、アドベンチャース経験はなかった。ただチームコンセプトの『世界大会で優勝することを最優先目的として活動する。そのためにも競技志向に徹し妥協のないレース活動を実践する』の一文に惹きつけられ、門を叩いた。

当時、ラフティングも読図も未経験、持っていたマウンテンバイクは重いし、トレランの大会にすら出場したことがなかった。しかし、彼は野性的本能とも言えるアウトドアスキルを備えていた。それが見る間に頭角を現し、周囲を驚かせた。

今では2回目の百名山に挑戦しているが、当時は、何が何だかわからずのまま、隊長を追いかけるようにトランスジャパンアルプスレース(TJAR)に出場。同じくしてトレーニング生となったヤマキー(山北)は、当時TJAR最年少出場者で、学生だった。二人とも、それまでは部活に勤しむことはあっただろうが、TJARは桁が違う。身体中に走る激痛、負けるわけにはいかない睡魔との闘い、体の芯から感じる寒さ…。恐らく、かなり痛い目に遭ったことだろう。それでも二人は最後までやり通し、太平洋に辿り着いた。本部担当であった私は、その連絡を受けて安堵すると共に鳥肌が立ったのを覚えている。

さて、チームにとって主力である陽希は、二百名山一筆書きに挑戦するため、今年はいない。メンバーはどうするのか?レースができるのか?そもそも世界チャンプを決めるレースに、陽希なくしてまともに戦えるのか?来年2月にあるパタゴニアレースに焦点を合わせているイーストウインドとしては、何も11月に無理に出場することはないのでは?そこまでして費用を使うのは無駄なのでは?その資金はどうするのか?不利が重なる。

当然ながらこの大会への出場はないものだと私は思っていた。

ところが、隊長は「出場する」と決意した。どんなことになってもこのチャンスは受けると言う。「チャンスが巡ってきた時はそれを受ける。これから世界のアドベンチャーレースに挑戦したいという若者たちへの夢を築いていくのが自分の使命。マチマチ(チームトレーニング生の西井万智子)を育てていくためにも、出場しよう。ヨーキが頑張ってるんだから、俺らも頑張ろう。それがあいつの励みにもなる」

こうして隊長は「行く」を前提に動き出した。だが「どうせ行けない」と思っていた私は、その行動に納得がいかなかった。

そんな時、ある一件が起きた。

私たちの大切な友人の死だった。カッパクラブで隊長と同じ釜の飯を食っていた仲間で、独立してカヤックツアー会社を立ち上げて頑張っていた。奥様にナイショで湖用のヨットを購入し、「バレたら殺される」と笑っていた。外見は穏やかだけど、内面は熱い人だった。そしてアキラとあまり変わらない年齢の一人娘を、彼はこの上なく可愛がっていた。病魔と闘った末のことだった。

冷たくなった彼が自宅に戻って対面した時、彼がどんなに辛くて長い闘いをしてきたかが伺えた。「お帰り。お疲れ様でした。よく頑張ったね」もう目を覚まさないと知りつつ、彼に話しかけた。と、その時、彼が語りかけてくれるようだった。「やれる時に、やりたいことをやった方がいい」と。

その彼の言葉に背を押された。隊長も47歳になる。今後、何年現役でいられるかわからない。大好きなアドベンチャーレースを続けられるうちは、打ち込ませてあげたい。私がすべきことは、全力でサポートすること。

お金はどうにかなる。生活もどうにかなる。いや、どうにかする。私がどうにかする。もう迷いはない。反対することもない。躊躇もない。やろう。

そう決めた時、眠ったままの友人が、小声で「おう」ってハニカんだ気がした。いつもの彼の顔だった。

まずはヨーキの代わりとなるメンバー探しから始まった。それまでの実績はもちろん、家族や会社からの理解、資金面と条件は厳しい。私たちは幾人かの名前を挙げながら、知り合いにも相談した。

そして、高濱康弘くんがメンバーとして参戦してくれることとなった。国内のレースはいくつか経験しているし、何よりレースに対する姿勢がストイックであるところがイーストウインドに合致する。こうして隊長、ヤマキー、マチマチ、高濱くんの4人で出場することとなった。

「今回の大会出場はより厳しい新たな挑戦になります。正規メンバーの陽希の不参加。高濱、西井の2名は海外アドベンチャーレース初出場と不利な条件があることは否めません。しかしながら、新たな人材育成もチームの課題として必須であり、避けて通れないステップであると認識しています。

また、どんな条件下でもチームイーストウインドの戦い方、スピリッツの体現をしたいと思います。

チームとして不十分さがあるほど厳しく苦しいレースになることを自覚し、最後まで諦めることなく地獄の苦しみを味わい尽くしたいと思います。

正直、上位入賞を目指す状況ではありませんが、違った戦いを精一杯やり遂げる決意ですので、応援のほどをよろしくお願い致します」

上記は今回のレースに出場するにあたっての隊長の言葉である。「どんな条件下でもチームイーストウインドの戦い方、スピリッツを体現する」その一文は、私がこだわっていた事が、なんとも小さく、つまらない事であったことを教えてくれた。

人は、その生命を全うする間に、それぞれ役目や行うべきものがある。それが数値になったり、お金に換算されたりと、いわゆる富や名声であれば他人に理解し易いのかもしれないが、本来のその人の生きる道や大義は、何を持っても測れない。

隊長とアドベンチャーレースは、私が想っている以上に大義があるのかもしれない。隊長がアドベンチャーレースを通して、その大義を果たそうとするように、私は、私自身の大義を果たすこととする。



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